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「デザイン経営」が企業にもたらす本当の価値

2024年10月1日

導入 

あなたのビジネスは、単なる製品やサービスを提供するだけでなく”ユーザーの心”を掴むことができていますか?デジタル化が進み、競争が激化する現代において企業が生き残り、成長するためには単なる効率化やコスト削減だけでは不十分です。そこで注目されているのが「デザイン経営」という新しいビジネス戦略です。デザイン経営とは、デザインの力を活用して企業全体の価値創造を図る経営手法のこと。これにより企業は市場での差別化を図り、持続的な成長を遂げることが可能になります。AppleやGoogleなど世界をリードする企業が既に採用しているこの手法は、いまや全てのビジネスパーソンにとって欠かせない知識となっています。このコンテンツでは、デザイン経営の基本概念から具体的な実践方法までを徹底解説します。 

デザイン経営とは

デザインの定義

日本では特に”デザイン”のことを色や模様、かたちなど意匠的なものとして捉えている方が非常に多いのですが、 経済産業省と特許庁が発表した「デザイン経営宣⾔」では、この”デザイン”を企業価値向上のための重要な経営資源として活⽤する経営手法を”デザイン経営”と提言しています。

引用:特許庁 特許庁はデザイン経営を推進しています
引用:経済産業省・特許庁 産業競争⼒とデザインを考える研究会 「デザイン経営」宣言

デザイン経営の目的

デザインを経営資源とみなし、企業価値を向上させる取り組みを「デザイン経営」と前述しましたが、デザインが本当に経営と結びつくのか、半信半疑な方もいると思うので、まずはデザイン経営を行う主な目的について解説できればと思います。

❶競争力の強化

現代の市場では、製品やサービスの差別化がますます難しくなっており、単に機能や価格で競争するだけでは、持続的な優位性を保つことは困難です。ここでデザインの力が発揮されます。デザイン経営は、製品やサービスの外観、機能、ユーザー体験を総合的に改善し、他社との差別化を図ることを可能にします。

❷イノベーションの促進

デザイン経営は、デザイン思考を取り入れることで、創造的な問題解決とイノベーションを促進します。デザイン思考のプロセスは、ユーザーのニーズを深く理解し、従来の枠にとらわれない新しいアイデアを生み出すことに重点を置いています。このアプローチは、企業が市場の変化に迅速に対応し、新たなビジネスチャンスを見つける助けとなります。

❸ブランド価値の向上

デザイン経営は、ブランドの一貫性と信頼性を高めるための重要な手段でもあります。優れたデザインは顧客の心に残りやすく、ブランドの認知度とロイヤルティを向上させます。企業全体でデザインの価値を共有し、一貫したブランドメッセージを発信することで、長期的なブランド価値の向上が期待   できます。

❹顧客体験の向上

今日の消費者は、単に製品やサービスを購入するだけでなく、その過程で得られる体験を重視します。デザイン経営は、顧客の視点から製品やサービスを見直し、顧客体験を向上させることを目指します。これにより、顧客満足度が向上し、リピーターや口コミによる新規顧客の獲得が促進されます。

つまり、デザイン経営の目的は、企業価値を向上させるためにデザインを経営資源として活用することです。この取り組みは、単に製品やサービスの美しさを追求するだけでなく、機能性、ユーザー体験、ブランド価値の向上を目指し、企業の競争力を総合的に高めることを目的としています。

デザイン思考との違い

ここで混同しやすいのが「デザイン思考」です。デザイン思考とデザイン経営は、どちらもデザインを活用するための重要な手法ですが、その適用範囲と目的が異なります。ここではデザイン思考とデザイン経営の違いについても触れておきましょう。

< 範囲とスコープ>

デザイン思考は、特定の問題解決やプロジェクトに焦点を当てたプロセスです。一方で、

★デザイン経営は、企業全体の経営戦略にデザインを組み込む広範な手法です。

< 目的>

デザイン思考の目的は、ユーザー中心の革新的な解決策を見つけることです。

デザイン経営の目的は、企業の競争力を高め、持続的な成長を実現することです。

< 適応範囲>

デザイン思考は、製品開発、サービス改善、マーケティングなど、特定の分野で適用されます。

デザイン経営は、ビジョンの策定、ブランド戦略、組織文化の構築など、企業全体にわたる戦略的取り組みです。

つまり、デザイン思考は、具体的な問題解決のためのプロセスであり、デザイン経営は、企業全体の戦略にデザインを統合する経営手法です。これらを適切に理解し、使い分けることで、企業はより創造的で競争力のある組織を築くことができます。

デザイン経営が必要な理由

次に、デザイン経営が必要な理由について触れていきます。

なぜ今、デザイン経営が注目されているのか

・デジタル時代の到来

デジタル技術の進化により企業と顧客の接点は増加し、多様化しています。ウェブサイト、モバイルアプリ、ソーシャルメディアなど、様々なデジタルプラットフォームを通じて顧客と接する機会が増える中で、一貫したデザイン戦略が重要となっています。デザイン経営は、これらの接点全てで一貫したブランド体験を提供するために必要不可欠です。

・消費者の価値観の変化

消費者の価値観が変化し、サステナビリティや社会的責任、エシカルな消費などが重視されるようになっています。デザイン経営は、こうした新しい価値観に応じた製品やサービスを開発し、企業の社会的責任を果たす手段としても機能します。

・成功事例の増加

世界的に成功している企業の多くがデザイン経営を実践していることも、注目の背景の一つです。例えば、AppleやIKEA、Mujiなどは、デザインを経営の中心に据えることで、大きな成功を収めています。これらの成功事例が、他の企業にとっての模範となり、デザイン経営の導入を促進しています。     ※企業の成功事例ついては劣後で紹介

・グローバルな競争環境

グローバル化が進む中で、企業は世界中の競合他社と戦わなければなりません。国境を越えて競争するためには、優れたデザインとブランド力が不可欠です。デザイン経営は、グローバルな市場での競争力を強化するための有効な手段となります。

ここまでで、デザイン経営は、企業が現代の厳しい競争環境で生き残り、成長するための強力な武器になるということをお分かりいただけたでしょうか。このように競争力の強化、イノベーションの促進、ブランド価値の向上、そして顧客体験の向上など、その必要性は多岐にわたります。

デザイン経営がもたらすビジネスへの影響力

デザイン経営は、企業がデザインを経営戦略の中心に据えることで、ビジネス全体に深い影響を与えます。具体的にデザインがビジネスにもたらす具体的な影響について5つご紹介します。

❶デザイン経営はビジネスの競争優位の確立

市場での差別化が難しい中、デザインによる独自性を持つ製品やサービスは、企業を他社と区別する重要な要素となります。

❷顧客エンゲージメントの向上

優れたデザインは顧客の心を捉え、ブランドへの愛着を生み出します。これにより、顧客のロイヤルティが高まり、長期的な関係を築くことができます。

❸業務効率の改善

デザイン思考を取り入れることで、部門間の協力が促進され、迅速かつ効果的な意思決定が可能になります。これにより、製品開発のスピードが向上し、市場投入までの時間が短縮されます。

❹イノベーション文化の醸成

創造的な問題解決を奨励することで、社員は新しいアイデアを出しやすくなり、企業は常に市場の変化に対応できるようになります。

❺持続可能な成長

環境に配慮したデザインや社会的責任を果たすデザインを採用することで、企業は消費者からの信頼と共感を得ることができます。

このように、デザイン経営がもたらすビジネスへの影響力は、多岐にわたります。企業はこの潮流を捉え、デザイン経営を戦略的に導入することで、持続可能な成長を実現することができるのです。

成功事例の分析

実際にデザイン経営を取り入れることで成功を収めた企業を、具体例と共に紹介いたします。

有名企業のデザイン経営戦略

Apple

誰もが知っているApple社は、デザイン経営の成功例として最もよく知られています。Appleの成功は、デザインとエンジニアリングを統合することで、シンプルで使いやすい製品を提供する戦略にあります。スティーブ・ジョブズの時代から、Appleはデザインを企業戦略の中心に据え、製品の美しさだけでなく、ユーザー体験の向上に重点を置いてきました。iPhoneやMacBookなど、直感的で魅力的なデザインは、ユーザーにとってのブランド価値を大幅に高めてきました。

▼デザイン経営がもたらした具体的な成果

Appleのデザイン経営がもたらした具体的な成果は、多岐にわたります。製品の直感的なユーザーインターフェースと美しいデザインは、顧客のロイヤルティを高め、リピーターを増やしました。また、Appleはデザインを通じてブランドイメージを強化し、プレミアム価格を設定することに成功しています。これにより、Appleは高い利益率を維持し続けています。

Muji

日本企業のMuji(無印良品)は、シンプルで機能的なデザインを通じてブランド価値を確立しています。Mujiの製品は、余計な装飾を排除し、機能性と使いやすさを徹底的に追求しています。無印良品のデザイン経営は、商品のデザインだけでなく、店舗のインテリア、パッケージデザイン、さらには広告戦略にまで及んでいます。この統一されたデザイン戦略により、Mujiは消費者から高い評価を受けています。

▼デザイン経営がもたらした具体的な成果

Mujiのデザイン経営は、売上の増加とブランド認知度の向上に直結しています。シンプルで機能的なデザインは、消費者にとっての使いやすさと魅力を提供し、多くのリピーターを生み出しています。また、Mujiは持続可能なデザインを推進しており、環境に配慮した製品開発が評価されています。これにより、企業の社会的責任(CSR)にも貢献しています。

Uniqlo

もう一つの日本企業、ユニクロ(Uniqlo)は、デザイン経営を活用して世界的なブランドへと成長しました。ユニクロの成功は、シンプルで高品質なデザインを手頃な価格で提供することにあります。ユニクロは、ファッション性と機能性を兼ね備えた製品を開発し、広範な顧客層にアピールしています。さらに、ユニクロは「LifeWear」というコンセプトを打ち出し、日常生活を豊かにする服作りを目指しています。この統一されたデザイン戦略により、ユニクロは国際市場での競争力を強化しています。

デザイン経営がもたらした具体的な成果

ユニクロのデザイン経営の成果は、グローバル市場での成功に顕著に現れています。シンプルで高品質なデザインは、多様な市場で受け入れられ、国際展開を加速させました。ユニクロの店舗数は世界中で増加し、売上も急成長しています。さらに、ユニクロはデザインを通じて企業ブランドを強化し、消費者に対する信頼を築いています。

デザイン経営は、製品の外観を超えた、戦略的なアプローチであり、企業全体の価値を高める重要な経営手法です。Apple、Muji、Uniqloなどの成功事例は、デザインがいかにビジネスの成長と競争力強化に寄与するかを示しています。これらの企業は、デザインを経営の中心に据えることで、顧客体験を向上させ、ブランド価値を高め、持続可能な成長を実現しています。

デザイン経営の具体的な取り組み

では、実際に自社でデザイン経営に取り組みたいと考えた時、何からはじめればいいのでしょうか。本章ではそれを明らかにしていきます。

1.デザイン責任者(CDO)の投入

デザイン経営の成功には、企業のトップにデザインの専門家を配置することが不可欠です。まず、Chief Design Officer (CDO) を任命し、経営層に組み入れます。大企業では耳にすることがあるかもしれませんが、中小企業にはまだ馴染みがないポジションかもしれません。CDOは企業全体のデザイン戦略を策定し、実行する責任を持ちます。これにより、デザインの重要性が経営レベルで認識され、全社的なサポートを得られるようになります。CDOの役割には、製品デザインだけでなく、ブランド戦略や顧客体験の向上なども含まれます。

2.製品・サービス開発のスタートからデザイナーが参加

製品やサービスの開発”初期段階”からデザイナーをプロジェクトに参加させることが重要です。デザイナーが最初から関わることで、ユーザー中心のデザインプロセスが確立され、製品やサービスの品質が向上します。これにより、顧客満足度が高まり、ブランドの信頼性が向上します。また、デザイナーの視点から得られるフィードバックは、イノベーションを促進し、市場のニーズに迅速に対応する助けとなります。多くの企業が陥りやすいのですが、プロセスの後半か要件確定後にデザイナーを登場させがちですが、要件が固まった上でデザインを描くのと、デザイン視点が入ったアウトプットでは、アウトプットの質が全く異なります。これは非常に勿体無いのでご注意を。

3.デザイン経営を推進する組織体制

デザイン経営を成功させるためには、企業全体でデザインの重要性を共有し、部門横断的な連携を強化することが必要です。具体的には、デザイン部門とマーケティング部門、製品開発部門の協力体制を整備することが求められます。これにより、デザインが企業戦略の中心に位置づけられ、すべての部門が一体となってイノベーションを推進しやすくなります。

4.デザイン人材採用の強化

優れたデザイン人材の確保は、デザイン経営の成功に不可欠です。企業は、デザイナーの採用や育成に力を入れ、クリエイティブな人材が活躍できる環境を整える必要があります。また、デザイン教育プログラムの充実や社内研修の強化を通じて、社員全体のデザインリテラシーを向上させることも重要です。

デザイン経営を阻む「デザイン経営の壁」

しかし、これまでデザイン経営に重きをおいていなかった企業が、いざデザイン経営を実施しよう!と試みても、そう簡単には行きにくいのが実情です。デザイン経営を推進するにあたりさまざまな壁にぶつかることでしょう。最後にデザイン経営を阻む壁にはどのようなことが想定されるかと、その解決策についても紹介できればと思います。

1. 経営陣の理解不足

経営陣のデザインに対する理解不足は、デザイン経営を進める上での大きな壁です。多くの企業では、デザインが単なる装飾やマーケティングの一部と見なされ、経営戦略の重要な要素として認識されていません。この結果、デザイン部門は経営から孤立し、十分なリソースやサポートを得られない可能性が非常に高いです。

解決策
経営陣にデザインの重要性を理解させるためには、成功事例の紹介や専門家によるセミナーを活用しながら、デザイン経営の必要性について説明するのが有効的です。また、Chief Design Officer (CDO) を設置し、経営層にデザインの視点を取り入れることも効果的です。CDOが経営戦略にデザインを統合することで、デザインの価値が経営陣に認識されやすくなります。

2. 部門間の連携不足

デザイン経営を効果的に進めるためには、各部門間の連携が必要不可欠です。しかし、実際にはコミュニケーション不足やサイロ化が障害となり、デザインの一貫性や全体的な統合が難しくなります。

解決策

定期的なクロスファンクショナルミーティングやワークショップを通じて、各部門間の連携を強化することが重要です。デザイン部門が中心となり、全社的なプロジェクトを推進することで、部門間の垣根を取り払うことができます。デザイン業務ではありませんし、非常に労力のいる作業にはなりますが、このコミュニケーションが全社的なデザイン経営の下地づくりに何より重要になってきます。

3. デザインリテラシーの低さ

デザインリテラシーとは、デザインの重要性やその活用方法についての理解度のことを指します。多くの企業では、デザインリテラシーが低く、社員全体がデザインの価値を十分に認識していないことが課題です。

解決策

全社員を対象としたデザイン教育プログラムや研修を実施し、デザインの価値とその活用方法を理解させることが重要です。これにより、社員全体のデザインリテラシーを向上させ、デザイン経営を推進しやすくします。また、デザインレビューを実施し、全社員がデザインに対する理解を深める機会を提供するのも、デザインに対する意識向上に繋がります。

4. リソースの制約

デザイン経営を実現するためには、適切なリソースの投入が必要です。しかし、中小企業を含む多くの企業では、デザインに割けるリソースが限られていることが多いです。

解決策
限られたリソースの中で効果的にデザイン経営を実践するために、外部のデザイン専門家やコンサルタントを活用することも検討するのも方法の1つです。また、デザインに対する投資を中長期的な視点で捉え、リソース配分を見直してみましょう。さらに、クラウドソーシングやパートナーシップを活用して、デザインリソースを補完する方法もあります。

最後に

デザイン経営を成功させるためには、組織全体でデザインの重要性を共有し、デザイン人材の採用・育成、組織体制の整備が必要です。企業の持続的な成長を実現するために、企業にあった形でデザイン経営に取り組んでみましょう。

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