フリーランスにデザイン業務を委託する際のポイント
2024年11月30日
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導入
デザイン業務を外部に委託することは、近年多くの企業が採用している戦略の一つです。社内のリソース不足やスキルの多様化が求められる中で、フリーランスデザイナーや業務委託デザイナーの活用が増加しています。しかし、自社に最適なデザイナーを見つけ、期待通りの成果を得るためには、適切な選定プロセスやコミュニケーションが欠かせません。デザイン業務の委託を検討する場合は、そのポイントや具体的な作業をあらかじめ理解し、スムーズにプロジェクトが始められるようにしましょう。
デザインを外部委託する手順を理解する
デザイン業務を外部に委託しプロジェクトを進行するためには、スムーズな進行と期待通りの成果を得るための適切な手順を踏むことが重要です。それぞれのプロセスをしっかりと進めることで、プロジェクトの成功率が高まります。
デザインの目的を明確化する
まずは、デザインによって何を達成したいのかを明確にしましょう。デザイン業務を外部に委託しようとする時点で、デザインの対象物、たとえばロゴやウェブサイト、商品パッケージ、営業資料といった具体的なイメージがすでにあるかもしれません。実際に委託を開始する前には、そこからさらに一歩進んで、そのデザインを通じてどのような目的を達成したいのかをはっきりさせることが重要です。
たとえば、以下の問いに沿ってデザインの目的を明確にします。
プロジェクトの背景は何か?(What)
ex) ブランドのリニューアル、新商品のローンチ、ABテストのための効果検証など
誰に向けたデザインなのか?(Who)
ex) Z世代、主婦層、ビジネスマン、高齢者など
デザインを通して達成したい目標は何か?(Why)
ex) 売上アップ、サイト訪問者数の増加、イメージコントロール、情報誤認の回避など
期待する成果を明確にしておけば、デザイナーもゴールを正確に理解し、適切な方向でデザインを進められるようになります。曖昧な指示や不明確な目標設定は、期待にそぐわないデザインを生む可能性が高くなるため、ここをクリアにしておくことが大切です。
必要な人材のスキルを明確化する
期待する成果がはっきりしたら、その成果を実現するために必要なスキルや経験を持つデザイナーを選定する必要があります。デザイナーはそれぞれ異なる分野で活躍しており、適切なスキルセットを持つ人材を選ぶことが重要です。
スキルの過不足を判断するポイントとして、大きく以下の2点があります。
Point①:必専門スキルと実績
求める成果に対して、必要なスキルや実績があるかは最も重要なポイントです。たとえばブランディング強化のためのロゴデザインをしたい場合、ブランドアイデンティティ強化の実績のあるデザイナーであることが望ましいでしょう。一方予算やスケジュールによっては、希望するデザイナーの採用難易度が非常に高くなってしまう可能性もあります。プロジェクトを進行するためには、望ましいスキルだけではなく、必要最低限なスキルが何であるかをイメージしておくことも必要です。
Point②:コミュニケーションスタイル
ポートフォリオに現れにくい要素として、コミュニケーションや働き方のスタイルがあります。デザイナーとの間には円滑なコミュニケーションがとれることが求められます。そのため採用する自社の働き方に適したコミュニケーションができる人材であることを予め面談やエージェントを通して確認しておきましょう。たとえば、複数人が絡む大規模なプロジェクトの一員として稼働してもらうことを想定しているのであれば、過去にチームで働いた経験があるデザイナーであると安心でしょう。また、プロジェクトの期間と作業量に応じた稼働体制がデザイナー側に整っていることも必要です。
あらかじめ必要な人材像を明確にすることで、デザイナー探しがスムーズになり、円滑にプロジェクトに着手することができます。
デザインの要件定義をする
デザイナーの定義と並行し、プロジェクトの具体的な要件を整理し、デザイナーが「何を作るべきか」を明確に理解できるようにしましょう。これを「要件定義」と呼びます。
たとえば、Webサイトのデザインの場合、以下の要素を定義することが役立ちます。
デザインの対象は何か?
Webサイト全体なのか、個別ページなのか
機能要件はどういったものか?
レスポンシブデザイン、問い合わせフォーム、会員登録機能など、デザインに関連する機能
デザインに制約はあるか?
モダン、クラシック、ミニマルなどのスタイル、あるいはブランドガイドラインに沿った色やフォントなど
これらの要素はデザインを進める上で重要な前提となります。あらかじめ明確にしておくことで、意図しない修正や手戻りを防ぐことができる可能性があります。
デザイン指示書を作成する
最後に、これまでに決定した内容を「デザイン指示書」として文書化します。デザイン指示書は、プロジェクト全体の概要や指示をまとめたもので、依頼者とデザイナーが同じ認識を持つための重要なツールです。デザイン業務は抽象的な概念を含むため、口頭の指示だけでは誤解が生じるおそれがあります。また、デザイン業務を進める中でプロジェクトの全体像の理解がずれたり、細かな指示を落とすことがないよう、デザイナーと委託者が同じ認識を持つツールとして活用すると良いでしょう。
デザイン指示書には、次の要素を含めることが理想的です。
プロジェクトの背景と目的
どのような目的でデザインを依頼するのか
デザインの要件
色、フォント、スタイル、機能など、具体的な指示
スケジュールとマイルストーン
納期や進捗確認のタイミング
特に、指示者がデザイン知識がない場合やデザインの要件に指定やイメージがない場合は、NGパターン(こういう表現にはしてほしくない、この色は使用しないでほしい)を先に伝えてあげると的外れな表現が出にくくなるのでオススメです。また、イメージがあるが、適切かどうかがわからないときはデザイナーと壁打ちしながらチューニングしていくとより的確なクリエイティブが生み出しやすくなります。
デザイン指示書の作成は、デザイナーの採用活動と並行して進め、契約締結のタイミングでその内容について合意できると理想的です。
“指示書”といっても、しっかりした資料や文書でなくとも上記のような情報が箇条書きに明記してあるだけでも、デザイナー側からすると作業がスムーズになりより良いクリエイティブを考案しやすくなります。
効果的なコミュニケーションをとる
デザインプロジェクトを成功に導くためには、デザイナーとの効果的なコミュニケーションが欠かせません。明確な指示とフィードバック、そして信頼関係の構築が、期待通りの成果を得るためのカギとなります。
デザイナーとのコミュニケーションが重要な理由
デザイナーが優れた成果物を生み出すには、依頼者の期待やビジョンを正確に理解することが重要です。しかし、言葉だけではデザインの細部まで正確に伝えることは難しく、認識のズレが生じることもあります。そのため、定期的なコミュニケーションを通じて双方の認識をすり合わせることが重要です。
デザイナーとの間で、すり合わせるべき具体的なポイントは以下です。
Point①:依頼者のビジョン
依頼者が頭の中で描くイメージやブランドのビジョンをデザイナーに伝えなければ、デザイナーはその意図を汲み取ることができません。デザインの方向性や細かなニュアンスを共有するために、依頼者は積極的に自分の考えを伝える必要があります。
Point②:プロジェクトの進捗状況
当初の想定よりも早く成果物を提出する必要があったり、求めるアウトプットが変わることがあります。こうした変更に柔軟に対応でき、結果としてプロジェクトが滞ることなく進行します。
Point③:デザイン要件
デザインは繊細な業務であるからこそ、依頼者との間で誤解が生じやすい側面があります。特に細かいデザインのニュアンスや感覚的な部分は一度で伝えることが難しいため、密なコミュニケーションを通じて、ズレが生じた場合は早い段階で解消しておくことが重要です。
適切なフィードバック方法とタイミング
成果物を一度に提出してもらうのではなく、中間地点での進捗状況の確認やフィードバックをおこなうようにしましょう。一方、フィードバックの内容やタイミングを誤ると、プロジェクト全体が滞ったり、デザイナーとの関係に緊張が生まれる可能性があります。
効果的なフィードバックを行うためのポイントは以下の通りです。
Point①:具体的にフォードバックする
フィードバックを行う際には、抽象的な表現や感情的なコメントを避け、具体的な指示や改善点を伝えましょう。例えば、「ここをもう少し改善してほしい」と言うよりも、「この部分の色合いをもう少し明るくして、視認性を高めたい」と具体的に説明することで、デザイナーは的確に修正作業を行えます。
Point②:タイミングに注意する
フィードバックはプロジェクトの進行に応じて、適切なタイミングでおこないましょう。たとえば初期段階で方向性が決まる前に詳細なフィードバックを行ってしまうと、後々の変更が難しくなることがあります。また、最終段階で大幅な修正を求めると、スケジュールが遅れるリスクもあるため、大幅なフィードバックはできるだけ早い段階で行うようにしましょう。
Point③:建設的でポジティブなフィードバックをする
デザインに対するフィードバックは、依頼者の要望や改善点を伝えることが目的です。一方、改善点を伝えるだけではなく、依頼者個人が気に入った点などポジティブな面を伝えることも、デザイナーにモチベーションを与える原動力になります。次の作業に向けて意欲的に取り組んでもらうためにも、デザイナーの心情にも配慮したバランスの良いコミュニケーションをとるようにしましょう。
<※これが重要※>重要なのは、主観的な視点でフィードバックを行わないことです。なんとなく好みじゃないという理由でデザインを否定したり、自分の好きな色やイメージを、本来デザインが果たすべき役割や、会社やサービスのブランディングを忘れて自身の感覚だけで判断・修正指示を出していないか確認しましょう。デザイナーが出してきたイメージが指示のイメージと異なる場合は、まずデザイナーの制作意図をたずねてみるといいでしょう。
Point④:継続的な信頼関係の構築
デザイン業務を外部に委託する場合、長期的なパートナーシップを築くことがプロジェクトの成功を後押しします。信頼関係があれば、デザインの一貫性を保ち、スムーズにコミュニケーションを図ることができます。
信頼関係を構築するためのアプローチは以下の通りです。
Point⑤:デザイナーの専門性を尊重する
フリーランスデザイナーは、特定の分野における豊富な経験や専門知識を持っています。依頼者がデザインに関する意見を出すことも大切ですが、専門性を持つデザイナーの提案や意見にも耳を傾けることで、より優れた成果物を生み出せる可能性が高まります。デザイナーの視点を尊重し、協力的な姿勢を示すことが信頼関係を深める第一歩です。
Point⑥:透明性を持ったコミュニケーション
デザイン業務においては、期待する成果などについて、透明性を持ったやり取りが不可欠です。予算や納期に関しては伝えづらい要素が含まれることもありますが、情報を隠したり、曖昧な指示を出すことでかえって信頼が損なわれる可能性があります。すべてのプロジェクト要件を明確に伝え、双方が同じゴールに向かって進むための透明性を保つことが、長期的な協力を実現するコツとなります。
Point⑦:成果を認め、評価する
デザイナーが期待以上の成果を上げた場合、それをしっかりと認め、感謝の意を伝えることは、信頼関係を深める上で非常に重要です。適切な報酬を支払うことはもちろん、言葉でもその努力を評価し、次回のプロジェクトでも積極的に協力を依頼することで、より強固なパートナーシップを築くことができます。
自社に最適(必要)なデザイナーを選ぶ
以上をふまえ、実際に業務を委託するデザイナーとして、適切な人材を見つけアサインしましょう。デザイナーを選ぶ際は、彼らのスキルや専門分野をしっかりと見極めることが重要です。ここでは、主なデザイナーの種類と、ポートフォリオを評価するポイントを紹介します。
デザイナーの種類
・グラフィックデザイナー
印刷物やデジタル広告、パッケージデザインなど、視覚的に魅力的なデザインを作り出すデザイナーです。企業ロゴなどデジタルな成果物だけではなく、名刺やパンフレットなどデザインを得意とする場合があります。
・モーショングラフィックスデザイナー
動画やアニメーションを作成するデザイナーです。デジタル広告やソーシャルメディア用のアニメーション、プロモーションビデオなどを制作します。
・UI/UXデザイナー
ユーザーインターフェース(UI)とユーザー体験(UX)を専門とするデザイナーです。特にWebサイトやアプリケーションの設計を手がけます。
・Webデザイナー
Webサイトのビジュアルデザインやレイアウトを担当するのがデザイナーです。UI/UXを実現するためのコーディング技術に精通し、デザインに加えて実装も一部担当できるデザイナーも存在します。一定の期間でWebサイトの修正を進めたい場合は、特に業務を委託しやすいでしょう。
・プロダクトデザイナー
物理的な製品のデザインを担当します。家具、家電、アパレル製品など、製造される物理的な商品のデザインを行い、ユーザーのニーズや機能性を考慮した設計を行います。特定の製品に対して技術的な知識を持つ場合もあります。
・空間デザイナー
店舗やオフィス、住宅などの空間を美しく機能的に設計する仕事です。利用者の動線や快適性、クライアントの要望を考慮し、デザインを設計します。スケッチや3Dモデリングの作成に加え、AutoCADやSketchUp、Photoshopなどのソフトを活用し、設計から完成までをサポートします。
ポートフォリオを適切に見極める
必要なデザイナーの種類を確認した上で、特定のデザイナーを選ぶ際には、ポートフォリオを確認することをおすすめします。ポートフォリオとは、デザイナー個人の実際の成果物をまとめたものです。ポートフォリオは、テキスト文書で表現しきれないスキルやデザインスタイル、クリエイティビティを確認するためにも材料として役に立ちます。
ポートフォリオを評価する上で重要なポイントは下記の通りです。
Point①:専門性と多様性のバランス
過去に参画したプロジェクトと成果物と、依頼したい業務に親和性があるかを確認しましょう。一方で、多様なプロジェクトに取り組んだ経験があるデザイナーは、依頼者の要望にも柔軟に対応できる可能性があります。自社の依頼の性質に合わせて、専門性と多様性のバランスを見極められるとよいでしょう。
Point②:一貫性と適応力のバランス
デザイナーには、それぞれの得意なスタイルがありますが、依頼するデザインに応じてそのスタイルが適切かどうかを判断する必要があります。一貫して高いクオリティの作品を持ちながらも、クライアントのニーズに応じたスタイルの変更や適応ができるかを確認しましょう。
Point③:デザインによってもたらした実績
デザインそのものだけではなく、デザイナーが手がけたプロジェクトの成果を評価することも重要です。たとえば作成されたデザインがクライアントのビジネスにどのような影響を与えたのかについて情報がある場合、その実績を確認しましょう。デザイン業務はそれ自体が目的ではなく、デザインを通してなんらかの成果を残すことを求められる場合がほとんどです。デザイナー自身にも目的意識があるかを確認することで、自社のビジネスに必要なデザイナーであるかどうかを判断する材料になります。
Point④:ユーザー視点を持ち合わせているか
特にWebサイトのデザインやプロダクトデザインを依頼する場合、成果物の見た目以上に、ユーザーにとって使いやすいデザインとなっているかを評価することが必要です。ポートフォリオの中でユーザー体験を重視したデザインがあるかどうか、実際にそのデザインがどのような評価を得ているかを確認しましょう。
Point⑤:問題解決力があるか
デザイナーはビジュアルを作成するだけでなく、クライアントの課題を解決する能力も求められます。ポートフォリオの中で、どのような問題をどのようにデザインで解決したかが明示されているケースがあれば、それをしっかりと確認しましょう。
一方で、ポートフォリオの内容だけでデザイナーを判断しないことも重要なポイントです。特にフリーランスのデザイナーは、顧客とのNDA(秘密保持契約)により、成果物を公開できない場合があります。また公開できる場合であっても、採用のタイミングによってはポートフォリオに反映が難しい場合があるかもしれません。そのため、ポートフォリオに実績が少ない、または掲載されていないからといって、すぐに「できない」と判断するのは避けた方がよいでしょう。デザイナーのスキルや経験をより正確に把握する必要がある場合は、直接のコミュニケーションの中で、「このようなデザインをした経験がありますか?」と確認することをおすすめします。
最後に
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